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牛の角膜

三刀月 ユキ

生物の教科書で見た
牛の角膜は青かった
保存薬か何かの色かもしれないが
とにかく、それまで見た
どんなものよりも青かった

牛はこんな青い目で
世界を見ているのだと思った
折しも狂牛病の流行った年
死んだ、殺された仲間の骨を
分からぬように細かく砕いて与えられ
この青い目で 人間を
見つめているのだと思った

震災の時 奈良県の北部に住んでいた
「ぐにゃあり」と揺れて家具が跳び震えた
エレベーターも電車も止まり
友人がうちまでやってきた
友人の上司は電話で
「線路を歩いて出社しなさい」
と命じたが 気弱な友人もさすがに断った
黒い津波が圧倒的な壁のように
押し寄せる映像を何度も見た
何度見てもどうしても訳がわからず
瓦礫の光景がただ恐ろしかった

それから、牛たちが、取り残されて
死体となり、積み重なる映像を見た
無人の町で死んだ牛は痩せていた
目は無残に膨れ上がって腐っていた
あるいは溶け流れて穴になっていた
あの青い目のことを思った
帰りを待つ人々や 巨大な原発も
あの目の内側に

青い目、青い青い目
いつもいつも私たちを見ているあの目
空よりも青い、海よりも⋯⋯
重くて深い 見えない大きなものに
耐えている あの青

あの青い目をした誰かのために
祈りたい
海にも空にも放射能があふれ出して
雨が降るとみんな不安な顔をして
あの目の中にも静かに
絶え間なく雨が降り注いで

土の日々を 黒い体をこごめて
耐えていた 祈り続けていた
重い鋤を引くように
重い荷を負うように

だから 

1o

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​芸術文化振興NPO準備委員会
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